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長野日報新聞「土曜コラム」に掲載中のコラムです。ぜひお読み下さい。
平成26年
平成27年
平成28年
平成29年
平成30年
令和元年からのコラム
平成31年
6. リスク 生命保険
7. 資産設計1
8. 資産設計2
9. 資産設計3
10. 投資マインド
11. 長期分散投資
12. 資産の棚卸し
13. FPになろう
14. 生命保険の見直し
15. アパート経営その前に
16. 相続その前に
平成19年
「貯蓄から投資へ」というスローガンが掲げられてから大分時間が経ちました。当時個人の貯蓄残高1,500兆円を投資に向けて、経済の活性化に結び付けようと考えられました。日経平均株価は2003年4月に7,603円という安値を記録して、現在18,000円前後となっています。大企業を中心に業績はかなり回復してきました。
IT関連業種が注目され株価を底上げしてきましたが、ライブドアショックによりIT関連株は大きく値を下げたままになっています。そしてデイ・トレーダーという言葉も生まれ、1 日中パソコンに向かいながらずいぶん儲けている人がいるかのように思われています。そんなニュースを聞いているとこれまで貯蓄だけをしてきた人が投資をしてみようと考えてしまうものです。
初めての投資は売り手の言い成り
積立貯蓄が満期になり、この資金を今度は投資に充てようと金融機関に出かけていけば、最近ではすでに多くの方が投資信託を始めていると説明されます。定期預金金利は0.3%前後ですが、投資信託では5%から10%を上回る商品もあります。もちろん元本保証はありませんから減ることもあります。投資が初めてであれば、最初から多くのリスクを取らないほうがよいでしょう。それならば株式と債券と不動産をセットにした投資信託商品はいかがでしょうか。これですと株式の落ち込みがあれば債券でカバーしますし、不動産の動きは株式、債券とは異なる動きをしますので、分散投資効果が得られます。
その後他の商品の説明を聞いているうちに、専門用語の多さにいつしか消化不良になり、ついにはどれでもいいよ。最終的には申込む本人が自己責任を取ればよいのだろうと腹をくくってしまいます。最後の決め手は現在こちらの商品が最も売れています。初めての方も多く購入されています。こんなやり取りで初めての投資商品選択がなされています。
売り手は金融商品を熟知して説明しています。重要事項や商品特性など間違ったことは説明していませんが、今売れているのはこれだからあなたもこれを購入すれば大きな間違いはないという論理は顧客の真の目的を把握せずに販売に結び付けていると思われます。実際に顧客の真の目的を一人ひとり確認しながら、顧客の知識、経験に合わせての説明はとても大変なことです。
日本人の特性として他の人と同じ行動を取りたい、一人だけ外れた行動は取りたくないと考えるでしょう。
この意識に適するには販売ランキングや平均値を用いるのは非常に有効と思われます。冷たい言い方ですが、まずは騙されたと思い購入すれば、その後そこから経験を持って得る事は数多いでしょう。
やがてリスクを愛好家になる
これまで元本保証の貯蓄のみ行なってきた人が初めてリスクのある商品を購入する場合、最初から大きなリスクは取らないでしょう。定期預金金利が0.3%ならば、せいぜい1%くらいのリスクを選択するのではないでしょうか。1%といっても定期預金金利の3倍もあります。しばらくすると他の投資商品が5%とか10%の利回りを現すと、自分の選択がみすぼらしく思えてきます。1%の利回りでは100万円を預けても1万円しか儲からないと思うようになるでしょう。
次に投資金額をもう少し増やして利回りの高い商品を選択するようになります。株式の割合を増やしたり、外貨運用を含んだり、新興国や新興企業に投資の目が向くかもしれません。
やがて投資に慣れてくると、投資信託は手数料も高く、具体的にどのように運用されるか分からないから自ら株式投資を試みます。株式投資も割安株対象のバリュー投資がいつしか短期間で大きく儲けられるグロース投資に変っていきます。結果として損失が発生するかどうかは分かりませんが、大きなリスクをいつの間にか受け入れているのです。
投資対象が短期間で儲かるか損をするか、自分の勘を信じて取る行動は正にギャンブルです。人の嗜好も始めから強い酒を好みませんが、次第に身体が強さと量の両方を求めるようになります。「貯蓄」「投資」「投機」「賭博」には明確な線引きはされていませんが、人は弱いものでいつしか冷静な判断ができなくなり、はじめは「投資」のつもりがやがて「投機」に移りがちだといわれています。
投資家の錯覚
投資の結果として儲かったか損をしたかは、全て自分の責任となります。その時の判断が後で結果として現れますので、冷静に正しく判断したいものです。それでは次のような場合どのように判断するでしょうか。問に対しては必ずどちらか選ばなければならないとします。
問1
①8 万円を確実に受け取ることができる
②85%の確率で10 万円を受け取れるが、15%の確率で何も受け取れない
問2
③8万円を確実に支払わなければならない
④85%の確率で10 万円損するが、15%の確率で1 円も払わなくて済む
さてどのように答えを選びましたか。多くの人は問1 では①を問2 では④を選んだのではないでしょうか。数学的に解答を導けば、期待値は①8万円<②8.5万円、③-8万円<④-8.5万円ということから問1は②、問2は③が正解となります。
この錯覚は確実な利益のほうを不確実な利益より優先し、確実な損失より不確実な損失を優先するという心理によるものです。投資において勝っている時は保守的行動を取り、負けている時はギャンブル的行動を取るということです。株式投資で言えば、元本を少し上回ると利食いして、元本を下回るとそれを認めたくない、売却しなければ損失は確定しないので、損切りができず塩漬け状態になります。結果として勝ちは薄く、負けは濃くなってしまうのです。
麻雀で負けが込んでくると、小さな役は狙わず一発大逆転の役を狙い、しまいに相手に振り込んでしまい、悲惨な結末になってしまった経験はないでしょうか。
リスクの認識
投資というとすぐリターンや利回りがどのくらいかを考えてしまいます。また他人の話をを聞けば、いくら儲かったという良い面ばかりが伝わってきます。
しかし、投資には元本が増えることもあれば、減ることもあるというリスクが伴います。よくハイリスク・ハイリターンといわれますが、大きなリスクを取れば、大きなリターンが得られるかといえばそうではありません。正しくは大きなリターンを望めば、大きなリスクが伴うハイリターン・ハイリスクとなるでしょう。
ご自身がどのくらいの損失まで受け入れられるのかを常に認識されていることが大切です。突然の損失に驚いてパニックに陥れば、冷静な判断は出来なくなるでしょう。投資はもう嫌だという方の中にはリスクの認識が不足していた方がいると思われます。
リスクには客観的なリスクと主観的なリスクがあります。株式投資は怖いから分散投資される投資信託のほうがリスクが少ないという思いは主観的なリスクであり、正しくリスクが認識されていません。この客観的リスク感覚を養うには投資に対する勉強と経験が必要となるでしょう。単に経験だけでは勝った負けたに止まりますので、何故その銘柄、商品を選んだのか、何故勝ったのか、負けたのかを考えるうちに投資マインドが向上していくでしょう。
長野日報土曜コラム平成19年6月23日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄
10 投資マインド
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